R指定のCGアニメ『Sausage Party』が面白そう・・・なのだが

 日本での配給は依然未定のようだが、セス・ローゲン脚本・制作・主演のR指定のCGアニメーション映画『ソーセージ・パーティー』(原題)が、すこぶる面白そう。

 「人間に調理され食べられてしまう」という真実を知ってしまった食料品たちの騒動を描くコメディだが、レビューを読むと、これがなかなか奥が深そうなのだ。

 批評家のMovieBobことボブ・チップマンはGeek.comのレビュー(記事/動画)で、セス・ローゲン/エヴァン・ゴールドバーグのコンビ(『ディス・イズ・ジ・エンド』『ネイバーズ』など)は、「肩の力の抜けた、まぬけっぽい、『ボクら、適当にバカやってるだけの、おかしなラリッた連中ですから』感を与えることにあまりに長けているため、そこに隠された洞察力や才能が見過ごされやすい」と指摘した上で、本作は、ピクサー風の擬人化において抑圧されているものを巧みに取り上げたパロディである、と評価。下ネタはその一面だが、本作を傑作たらしめているのは、喋る魚や車の物語を家族や成長といった主題のメタファーとして展開する、ピクサー風の擬人化のもう一つの面にも大胆に挑んでいることにあるのだという。すなわち、この喋る食料品たちのコメディは、宗教をめぐる映画なのだそうだ(=買い物客を天国へ連れて行ってくれる神のように崇めてきた食料品たちの信仰の危機!)。
 そうして、宗教/無神論、人種、ジェンダーといったものを笑いのネタにしつつも、欧米の大人向けアニメにありがちな、マイノリティを標的にしてひとり悦に入る「下に向かって殴る」(punching-down)感はなく、食料品の姿に仮託された、いかにもな往年風のエスニック・ステレオタイプも、むしろ「食料品(とそのパッケージ)にエスニシティを投影する現実世界の風潮に対する抜け目のない批評」となっている・・・というから、大いに期待できそう。

 一方で、コメディ・サイト Dorkly の記事「『Sausage Party』のアニメーターたちはクソみたいな扱いを受けていたらしい」は、同作制作の舞台裏をめぐる残念なニュースを報じている。
 ニュースの発端は、あるサイトでの監督インタビューに対して、「プロダクション・コストが低く抑えられたのは、共同監督の一人グレッグ・ティアナンが、無給で超過勤務を要求したからで、30人以上のアニメーターが耐えかねてプロダクションの途中で去ったが、彼らの名前は最終的なクレジットから消された」との趣旨の匿名の告発が書き込まれたこと。この書き込み後、告発を裏付けるような複数の匿名証言を Variety 誌が報じており、トラブルがあったのは確かな模様。

 日本公開とともに、アニメーターたちのクレジット回復(と労働環境改善)が待ち望まれるか。