作者の知らない4つ目のエンディングが存在したゲーム『Event[0]』

(※)以下、具体的詳細は伏せるものの、ゲーム『Event[0]』(2016年)のエンディング分岐に関するネタバレを含みます。

 ゲーム『Event[0]』(Ocelot Society, 2016)は、3D一人称視点での探索とコマンド入力式テクスト・アドベンチャーとが組み合わされたSFアドベンチャー・ゲーム。プレイヤーは、遭難の末に漂着した宇宙船内を探索しながら、船に搭載されたAI「Kaizen-85」とキーボードで会話をし、地球に帰る道を探ることになる(レビューを書いた)。


Event[0] Announcement Trailer 2016

 3つのエンディングが用意されているはずのこのゲームには、4つ目のエンディングが存在する、しかし、クリエイターもその存在をつい最近まで知らなかった。・・・そんなストーリーを、同作のデザイナー/ライターであるイマニュエル・コルノ(Emmanuel Corno)氏がツイッター上で報告し、話題を呼んだ(参考:GamasutraKotaku)。

 ツイッターでの発言後に彼が掲示板Redditに投稿したところによると、発見のきっかけは、シナリオに関するプレイヤーからの質問メールで、物語重視/マルチ・エンディングのゲームについて「公式解釈」を与えてしまうことに気が乗らず、オンライン上でまとめられている解説・分析の参照を促そうと思って、Wikipedia のあらすじ紹介を開いたら、自分の知らないエンディングが書かれていて驚いたのだという。彼が開発チームのメンバーに確認したところ、もう一人のデザイナーも、プレイ動画からこのエンディングを知って同様に驚いていたそうだ。発売は2016年9月15日だが、同じ年の10月初めには、この「隠されたエンディング」の動画がアップされていたようだ。

 「Kaizen」の頼みを聞き入れるかどうかが、(本来は)エンディングの重要な分岐点の一つとなっているのだが、問題のエンディングは、終始「Kaizen」と友好な関係を築いていた場合に、「Kaizen」の頼みを断りつつ、良好な関係を盾に「ごめん」「お願い」と頼み込むと、「Kaizen」が説得をさながらしぶしぶ受け入れて、こちらの要望(=地球に向けて発進)を実行してもらえる、というもの。信頼と疑心をめぐる物語にぴったりな、何とも不思議なバグ。

 コルノ氏のRedditへの投稿より:

僕らはこのエンディングはゲームのバグであると結論付けている、あるいは、お好みであれば、僕らのAIの創発的なふるまい(emergent behavior)、ということだ。正直言って、僕はこれを修正したいと思わない。僕は、僕自身が知らなかった秘密のエンディングがあるゲームを作った、という考えに愛着を感じる。

結論として、こう言おう。物語を書くシステムを作れ、君は失望させられないだろう、と。


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