トランプ勝利が意味するものは「民主主義にとっての災難」・・・トランプ氏曰く?

 紹介を書こうかな、と思っているうちに、日本でも報じられるようになった普通のニュース的な話題だが、アメリカ大統領選の票差問題について、Independentの記事「ヒラリー・クリントンは、バラク・オバマを除くほかのいかなるアメリカ大統領候補よりも多くの票を受け取っていた」(Ben Kentish, "Hillary Clinton set to receive more votes than any US presidential candidate in history except Barack Obama", Independent, 2016/11/14)が、ちょっとおもしろいことを述べていた(得票数と得票率を混同させるかのような書き方にはやや疑問もあるが・・・)。

ニューヨーク・タイムズの選挙アナリスト、ネイト・コーンは、すべての投票が数え上げられれば、6340万人のアメリカ人がクリントン氏に、6120万人がトランプ氏に投票し、クリントン氏が1.5%の票差で「勝利」していたことになる、と概算している。その〔クリントン票の〕総数は、2008年と2012年のオバマ氏を除いて他のいかなる大統領候補よりも票を受けたものということになる。
しかしながら、アメリカ大統領選で問題となるのは、各候補の得票の総数ではなく、選挙人の獲得数なのだ。〔・・・〕トランプ氏は、ミシガンやウィスコンシンのような、従来民主党の確実州を守る防壁とみなされていた州を思いがけず奪うことで、選挙人獲得数において勝利した。
クリントン氏の並外れた得票数は、部分的にはアメリカの人口増加によるものだが、過去の候補に比べて彼女が有権者たちを引きつけることに失敗した、との見方を崩すものである。クリントン氏が一般投票では勝利していたであろうと思わせるかなりの票差は、選挙人制度の公平性をめぐって論争を呼びそうだ。
トランプ氏自身が、《バラク・オバマは2012年に一般投票で負けていたにもかかわらず大統領の地位を保持した》との勘違いをして、選挙人制のことを「民主主義にとっての災難」と呼んだことがある。

 アメリカの大統領選は各州ごとに数が割り当てられた選挙人の選出を行うもので、割り当て数が必ずしも人口に比例しておらず、また、ほとんどの州で勝者総取り方式が採用されているため、全米でより多く票を獲得していても負ける場合がある(アメリカ大使館による解説)。

 2000年の共和党ジョージ・W・ブッシュと民主党アル・ゴアの対決でも、一般投票で勝っていたアル・ゴアが落選したが、今回の票差は確実にそのとき以上のものとなるようだ。ただし、選挙人の獲得数としては、271対266と僅差だった2000年の選挙に対して、今回は306対232と大差がついている。まさにトランプ氏のいう「民主主義にとっての災難」が顕在化した歪な大勝といえよう。たまにはトランプ氏も正しいことを言うのだ、不純な動機と間違った理由付けからだが。