紹介するのは、アメリカのゲーム・サイト GameRevolution の記事「白人至上主義者の元リーダーが指摘、マルチプレイヤー・ゲームはリクルートに使われている」(Astrid Johnson, "Former White Supremacist Leader Says Multiplayer Gaming is Used for Recruitment", GameRevolution, 2018/06/29)。白人至上主義運動からの離脱を支援する非営利団体「ライフ・アフター・ヘイト」の創設者が掲示板サイト Reddit で行なった質疑応答を紹介している。
「『フォートナイト』『マインクラフト』『COD』全部さ」
以下、記事より抜粋。
クリスチャン・ピッチョリーニは『ホワイト・アメリカン・ユース:アメリカで最も暴力的なヘイト運動への私の転落、そして私はどのように抜け出したか』の著者で、アメリカ最初のネオナチ・スキンヘッド・グループであるシカゴ・エリア・スキンヘッズの元メンバーだ。彼は現在、平和の唱道者であり、人々がヘイト・グループを去るのを手助けすることを使命とする「ライフ・アフター・ヘイト」の創設者である。彼は Reddit の AMA 〔訳注:”Ask Me Anything”(「何でも質問して」)〕に参加し、白人至上主義運動について人々から質問を受けた。参加者の一人がリクルートのためにどのような狡猾な手口が用いられているかを尋ねたところ、答えの一つはマルチプレイ・ゲームというものだった。
「私たちは、疎外された若者を見つけ出して彼らに『楽園』を約束していた」と、ピッチョリーニ。「今日では彼らは、鬱やメンタル・ヘルスのフォーラムやマルチプレイヤー・ゲームに入り込んで疎外された若者をリクルートするような悪質な戦術を用いている。」 別の参加者が、『オーバーウォッチ』や『リーグ・オブ・レジェンド』を一日中差別発言を連呼しながらプレイする白人至上主義者の要員でもいるのか、とマルチプレイヤー・ゲームについてさらに尋ねたところ、彼は「さしさわりのないほのめかしをそれとなく口にしたうえで、かかった瞬間に飛びかかるんだよ…『フォートナイト』『マインクラフト』『COD』全部さ」と答えた。
AMA のスレッドには、ネオナチや白人至上主義者のリクルーターを目にした自身の経験を語る反応が多くから書き込まれた。frickineh というユーザーはこう語る。「自分は『The Elder Scrolls Online』でも、その手の連中を見かけてきた。ゲーム内の種族について多くの人が『人種差別的な』ことを言うんだけど、時折、現実世界について踏み込んで他の人々からも同意を得ようとし始める奴がいるのさ。ただのクソ野郎どもだと思っていたけれど、少なくとも一部は同類を釣ろうとしているのだと賭けてもいい。」
「人種主義者ではない」という嘘
本人の自己紹介によると、ピッチョリーニは、1987年、14歳の時にリクルートされ、1996年に22歳で去るまでの8年間、暴力的な白人至上主義運動に属していた。その後、2009年に「ライフ・アフター・ヘイト」を創設し、現在に至る(ピッチョリーニの公式サイトは2009年、ライフ・アフター・ヘイト公式サイトは2011年を創設年としているが、おそらく登記上の事情によるものだろう。同団体の Twitter や YouTube などのアカウントは2010年1月に作成されている)。
「ライフ・アフター・ヘイト」は昨年、まだオバマ政権下であった1月に国土安全保障省からの助成金交付が決まっていたにもかかわらず、ドナルド・トランプ大統領就任後に助成対象から外されたことでもニュースとなった(Full Frontal with Samantha Bee これについては、Democracy Now! の彼へのインタビューの一部を日本語字幕で見ることができる)。
Reddit の AMA のスレッドでは、「白人至上主義者がオンライン・ゲームでセールス・トークをやっているスクリーンショットを見てみたいな。アーリアン・ブラザーフッド〔訳注:白人至上主義の囚人ギャング組織〕みたいなグループが『マインクラフト』のサーバーを立ち上げる、っていうのは…」という茶化した書き込みに対して、ピッチョリーニは「君は、白人至上主義運動がいまだにスキンヘッドやKKK、アーリアン・ブラザーフッドをめぐるものだという誤った想定をしている。」と応じている。
これは、ピッチョリーニ自身が警告してきた、「オルト・ライト」「ホワイト・ナショナリズム」といった白人至上主義の新たなブランド付けを念頭に置いたものだろう。ピッチョリーニは、彼らにお決まりの、従来型の白人至上主義から距離を置く身振りについて、①彼らはリクルートの初期段階にある、②彼らは嘘をついている、と解説し、信じてはいけない、と明言していた(Business Insider)。
「僕らはつねに嘘をついていた」とピッチョリーニは語る。「メディアに対しては、自分たちはヘイト組織ではない、白人支持の組織(pro-white organization)だ、と。僕らは自分たちの白人としての誇りが奪われたと感じているのだ、と。それはすべて印象操作だった。閉じられたドアの裏側では、優越性と権力、自分たちのようでない人々を抹殺することが一切だったのだから。」
ピッチョリーニの発言は、特定のゲームやオンライン・ゲーム全般を非難するようなものではなく、むしろプラットフォームが利用されることについてプレイヤーも運営会社側もしばしば無防備・無関心であることを警告するものだ。記事がスレッドの反応を紹介しているように、多くのプレイヤーはその手の不穏な言動を目にしていながら、リクルート経路になっているとまでは理解しないわけである。
なお、AMA では、ネオナチ・パンク・バンドの過去を持つミュージシャンでもあるピッチョリーニが、「僕の知られてはいけない秘密は、The Clash(左翼のバンドだ)が、永遠の最愛のバンドであったということだ。」と書き込む、微笑ましい(?)一幕も見られた。
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