【動画】「オルト・ライトを怒らせているゲーム、『Wolfenstein 2』」(Vice)

No More Nazis

 Vice の動画「オルト・ライトを怒らせているゲーム、『Wolfenstein 2』」(“Wolfenstein II Is The Video Game That's Pissing Off The Alt-Right”, 2017/10/27)が素晴らしい。今月発売された新作FPS『Wolfenstein 2: The New Colossus』(ウルフェンシュタイン2:ザ・ニューコロッサス)関係者へのインタビュー。ゲームは、第二次世界大戦で敗れ、ナチス・ドイツに占領・植民地化されたアメリカを舞台にナチスと闘う、歴史改変SFである。


Wolfenstein II Is The Video Game That's Pissing Off The Alt-Right (HBO)

 開発元 Machine Games のナラティヴ・デザイナーのトミー・ビョーク(Tommy Bjork)、販売元 Bethesda Softworks の PRディレクターのピート・ハインズ(Pete Hines)、作中でレジスタンスを率いる黒人女性を演じたデブラ・ウィルソン(Debra Wilson)の3人がインタビューを受けている。トランプ政権の誕生や「オルト・ライト」「オルタナ右翼」(Alt-Right)を名乗る極右グループの台頭といったアメリカの近況の中で、ゲームが否応なく同時代性を帯びたことに対して、それぞれの考えが率直な言葉で語られている。

「あんな連中、クソくらえさ!」

 作品のセリフやバック・ストーリーを書いたトミー・ビョークは、「2014年にストーリーを書き始めたときからアメリカを舞台にすることは決まっていたが、アメリカの街頭に実際にナチが現れることは想定していなかった」と、作品と現実の出来事は偶然の一致であることを断る。だが同時に、自身が1980年代のスウェーデン(Machine Games の本拠地)に育ち、子どもの頃には今のアメリカと同じようなネオナチの行進を目にしてきたことを語り、「ナチはクソがつくほど嫌い」だから、作品に参加できて光栄、と笑う。

 一方、販売元の副社長ピート・ハインズが質問を受けているのは、「#NoMoreNazis」のハッシュタグとともにマーケティング・キャンペーンを飾った「アメリカを再びナチのいない国に」(Make America Nazi-Free Again)、「わたしのアメリカじゃない」(Not My America)というスローガンについて。前者は、言わずと知れた「アメリカを再び偉大に」(Make America Great Again)というアメリカ大統領選でのドナルド・トランプの選挙キャンペーンのスローガンを想起させるし、後者は、トランプ政権に抗議する人々のあいだでしばしば用いられているスローガンそのままである。

 公式ツイッターは、白人至上主義者を「なかにはとてもよい人々もいる」(some very fine people)と擁護したトランプ大統領に反論するかのように、「彼らは『よい人々』などではない」ともツイート。

 「反トランプだ」「アンチ白人だ」「プロパガンダだ」といった当該グループからの反発に引き下がる様子を一切見せず、「あんな連中、クソくらえさ!」("F*** those guys.")と、Vice インタビューの以下のハインズ発言部分のクリップを誇らしげにツイートしている

ハインズ:自分がナチでない限り、反ナチであることに反対する人なんかいないはずだよ。共和党支持者だろうが民主党支持者だろうが、リベラルだろうが保守派だろうが、関係ないはずさ。あの連中に対しては誰もが団結できるはずなんだ。

Vice:「アメリカを再びナチのいない国に」とか「わたしのアメリカじゃない」とか……要するに、なんというか、ぶっちゃけ、トランプのことを話しているんじゃないでしょうか?

ハインズ:いや、ナチのことですね。

Vice:スズメバチの巣を突いているような感じがしますけど。

ハインズ:ひょっとすると、ちょっとね。でも、ナチでいっぱいのハチの巣だろう? あんな連中、クソくらえさ! ナチの巣くらい突いてやるよ!(笑)

 作品に登場するレジスタンスのリーダー、グレイス・ウォーカー(Grace Walker)の声を演じたデブラ・ウィルソンとは次のような会話が交わされている。

Vice:プレイするのは、人口を見れば、白人男性が多いわけで、〔作中でグレイスが人種差別という問題を語ることについて〕居心地悪く感じる人もいるかもしれませんよね?

ウィルソン:ゲームプレイはあなたを居心地悪くさせるべきものだと私は思う。堅くそう信じている。なぜって、快適でいられる状態からは何も学ばないでしょう。

「政治的」であることを怖れない

 ナチスがゲームの悪役であることが突如として物議をかもすものになってしまったわけだが、PC Gamer のある記事は、数十年も前からナチスが悪役のシリーズがナチス(およびKKK)を悪役にしていることに激しく反発する人々の滑稽さをからかっている。

『Wolfenstein』シリーズのデビューは、実のところ、1981年のトップダウン・ステルス・ゲーム『Castle Wolfenstein』と、1984年の続編『Beyond Castle Wolfenstein』にまでさかのぼる。だが、1992年に id Software が出した、ナチを殺すゲーム『Wolfenstein 3D』と、その前日譚でこちらもナチを殺すゲーム『Spear of Destiny』により、FPSシリーズとして広く知られるようになった。シリーズは2001年にはActivision によって、ナチを殺すゲーム『Return to Castle Wolfenstein』としてリブートされたが、2009年のナチを殺すゲーム『Wolfenstein』のリリースまで休眠期間に入った。Bethesda が id Software の買収とともにシリーズの権利を獲得し、強力なキャラクター重視のツイストを加えて出したのが2014年のナチを殺すゲーム『Wolfenstein: The New Order』で、翌年には『Wolfenstein: The Old Blood』が続いた。ナチを殺す「スタンドアローン拡張」の前日譚である。

 ガーディアンの寄稿者は、「政治を持ち込むな!」という、政治的中立性を装った反発の欺瞞性を次のように指摘する。

ナチスは現実のものだったし、今なお現実のものであり、彼らに対するスタンスは、いずれにせよ、政治的なものである。『Wolfenstein』に向かって「政治的になるのはやめろ」と言うのは、『Wolfenstein』であることをやめろと要求することだ。


Launch Trailer – Wolfenstein II: The New Colossus

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