Japanese Breakfast がレトロな短編RPGを無料リリース

『Japanese Breakquest』

 アメリカのインディー・ポップ・アーティスト、Japanese Breakfast がブラウザ上で遊ぶ無料の短編RPG『Japanese Breakquest』を今月14日にリリースした。

 Japanese Breakfast(公式サイト)は、韓国生まれ・アメリカ育ちのミシェル・ザウナー(Michelle Zauner)によるソロ・プロジェクト。ソロ以前は Little Big League というバンドのボーカルとして活動していた。ゲームは、エレイン・ファス(Elain Fath)という女性ゲーム・デザイナーとのコラボレーションによるもので、今年発表のセカンド・アルバム『Soft Sounds from Another Planet』に収録された曲“Machinist”とそのミュージック・ビデオを発展させたストーリーとなっている。


Japanese Breakfast - Machinist (Official Video)

 プレイヤー・キャラクターの名前“J. Brekkie”は彼女がツイッターや YouTube で用いているハンドルで、他にもアーティスト名その他の音楽ネタが散りばめられており、その意味では、あくまで Japanese Breakfast の音楽のファンのためのゲームと言える。だが同時に、スーパーファミコン時代のいわゆる「J-RPG」への彼女自身のノスタルジックな偏愛の告白ともなっているところが、なかなか秀逸。二重の意味でファン・フィクション的というか、ともすれば内輪のおふざけっぽいゲームを通して、彼女が大切な記憶としている彼女の創作の原風景が、ちょっと小恥ずかしい親密な感覚とともにプレイヤーの前に立ち現れるのである。

 プレイ時間は30分ほど。同アルバム収録曲のMIDI版が全編のBGMとなっており、ゲームをクリアすると、このMIDI版フル・アルバムのダウンロード・リンクがもらえる。

偏愛と内省

 Polygon のインタビュー記事によると、彼女は、4歳の時に父親と『聖剣伝説2』をプレイして以来、ゲームに深い愛着を抱いてきたのだという。彼女は色々なインタビューで、一人っ子で、近所に子どももおらず、空想や一人遊びにふける時間の多かった子ども時代について語っており(参考:Rolling Stone)、そうした中でゲームやアニメに見出した愛着と現在のアーティストとしての創作活動とのつながりを強調している。

 たとえば、彼女は曲中にアニメからのサンプリングを忍び込ませることでも有名で、今年7月のインタビューでは、中学校時代に音楽の趣味のある友達が出来て音楽を色々と聴き始めるようになるまでは、アニメを見ながら耳にするサウンドトラックが音楽に聴き入る最初の体験だった、と述べて、「お気に入りの作品は?」との質問には「『ああっ女神さまっ』、『らんま1/2』、『天地無用!』、『serial experiments lain』、『カウボーイビバップ』、宮崎駿の全作品」と答えている(動画/FaceCulture)。

 他方で、彼女は、同じく韓国人の母を持つ女性シンガー、カレン・O(Yeah Yeah Yeahs)の存在に勇気づけられてきたことを語り、母親の死を通して深まったアイデンティティをめぐる内省が曲作りの中に生きていることも語っている(The Village Voice)。子ども時代に遡るポップカルチャーへの偏愛の記憶も、こうした彼女自身の自己をめぐる内省と結びついているのだろう。ゲーム『Japanese Breakquest』も、愛らしい、ジョークっぽい小品であるが、そういうスタイルを通して提示される彼女の物語への愛には切実なものが感じ取れる。

 彼女は、最近では自身のミュージック・ビデオの監督も務めており、上の“Machinist”のほか、ホラー映画と『ドニー・ダーコ』を思わせる(?)“Road Head”を手掛けている。


Japanese Breakfast - Road Head (Official Video)

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