【ゲームの英語】『Fallout 4』:“Hit the road.”

「お前は軍隊タイプじゃない、一匹狼だ」

 本日のフレーズ:

I can usually size people up at a glance, but you...you're different. And it's bugging the heck out of me. You're not the military type, you're a loner. So I can't figure out why you're sticking around. You got what you wanted, so why don't you hit the road?

Fallout 4, Bethesda Softworks, 2015)

 核戦争による文明崩壊後の世界を舞台とするオープンワールド・アクションRPG『Fallout 4』(フォールアウト4、2015年)より。

 技術と知識の保全・管理を目的とする軍隊組織 Brotherhood of Steel(ブラザーフッド・オブ・スティール)の偵察隊と遭遇。プレイヤーが彼らを助けた場合、部隊のリーダーがブラザーフッドへの加入を誘ってくる。これを受諾し加入すると、主人公に対して終始厳しい態度を見せる隊員の一人が、上のセリフを述べる。

 “at a glance”は「一目見ただけで」。“the hell [heck] out of...”は動詞の強意に用いられる俗語表現で、ウェブスター辞典によると「口語的」かつ「無作法」(informal + impolite)な表現。“loner”は「一人でいることを好む人」のこと。“stick”は自動詞としては「くっつく」といった意味を持ち、“stick around”で、「近くにいる」「あたりをぶらぶらする」「離れずに一緒にいる」といったニュアンスとなる。

 “You got what you wanted.”は、直訳すると、「あなたはあなたが欲しかったものを手に入れた」だが、相手(you)に向かって一方的に断定するので、「満足しただろ?」といった含みとなる。同じ『Fallout 4』の中で見かけた事例を挙げると、あるクエストの終わりに、コンパニオンとなるキャラクター、ハンコックが別のキャラクターに向かってこんなセリフを発する。冷酷なようで、彼なりの優しさでもあるような、ちょっと面白いセリフだ。

Why the long face? You got what you wanted.

浮かない顔するなよ。満足したんだろう?

 終わりの“hit the road”は、“hit”(打つ、叩く)が接触・到達のイメージでさまざまに用いられることを理解すると、分かりやすい口語表現。「出発する」「立ち去る」といった意味となる。別のコンパニオン、ニック・ヴァレンタインは、“Time to hit the road?”とプレイヤーに問いかけてくる。この場合、「(一緒に)出発するかい?」という誘いの言葉である。

 私的訳文:

俺は普通なら一目見ただけで人間が分かる。だけど、お前は……お前は何か違う。それが俺をいらつかせるんだよ。お前は軍隊タイプじゃない、一匹狼だ。だから、どうしてお前がうろうろしているのか、俺には分からん。用は済んだだろう、だったら、どうしてさっさとよそへ行かないんだ?

「人類」の名のもとに

 『Fallout 4』では、シリーズ過去作品に見られたカルマ・システムが廃止されている。ただ、この廃止によって、「善悪の判断は、プレイヤー次第です」と丸投げされているのかと言えば、それは少し違うだろう。

 『Fallout 4』においてカルマ・システムに代わるものとして、プレイヤー・キャラクターの行動に対するコンパニオンたちの反応が用意されている。パワーアーマーに乗り込むたびにいちいち歓喜する奴がいたりするので、それほど極端に嫌われ続けることを心配する必要はないが、自分の行動が、それぞれの背景を持ったキャラクターたちの目にどう映るかを推し量ることができるのである。そして、メインクエストに必ず絡んでくるコンパニオン・キャラクターは、実のところ、ニック・ヴァレンタインとパイパー・ライトの2人なので、メインクエスト上、どれが歩むべきでない道で、どれがベターな選択肢と考えられているのか、作り手側の意図は比較的明瞭となっている。

 メインクエストには、4つのファクションが登場するが、対立の要となるのは“humanity”という言葉だ。「人間性」、そしてまた、集合としての「人類」(=humankind, mankind)をどのようにとらえているか、というところで対立の主軸が形成されている。あるファクションの指導者は、自らの組織を「人類最良の希望」(mankind's best hope)と呼ぶ一方で、地表を堕落し汚染された、死んだ世界とみなす。荒廃した地表に暮らす人々に人間性を見出さず、彼らを人類の一員と考えないのである。このゲームには悪役がはっきりと設定されており、この人物に最後まで加担するならば、地表に生きるキャラクターたちから軽蔑されるにふさわしいのである。

 残りの3つのファクションの違いは、この組織をなぜ止めるべき脅威とみなすか、というところにある。別の言い方をすれば、何を守るべきものと考えているか、という違いにある。それは、予告編でそれぞれのリーダーの口から語られていることでもあり、プレイヤーは実際のプレイのなかで、何が両立し得るか、両立し得ないかを見極めて、選択を下していくことを求められるのである。

Fallout 4 - Launch Trailer

 繰り返せば、『Fallout 4』はクエスト上は等価な選択肢(4つのファクションのいずれかを選ぶ)を、物語的には必ずしも等価な選択肢とはみなしていない。そして、そのことについて率直でもある。「お前は軍隊タイプじゃない、一匹狼だ」というのは、このオープンワールド・ゲームそのものへのメタ的な言及として受け取れるだろう(前作『Fallout 3』の主人公には、文字通り“Lone Wonderer”=「孤独な放浪者」という呼び名が与えられていた)。

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