【ゲームレビュー】『ISLANDS: Non-Places』:点在する「場所ならざる場所」

作品名:ISLANDS: Non-Places
開発元:Carl Burton
発売年:2016年
PC(Steam

 公式の紹介文には「ありふれたもの(the mundane)のなかへのシュルレアルな旅。10の風変りな環境に隠されたエコシステムを解明せよ。不思議な、しかし見慣れた光景を探索して雰囲気あふれる体験への扉を開くのだ。」とある。

 用意された10個の3D場面を360度水平方向に回転させながら、場面のなかのオブジェクトをクリックしていくゲーム。プレイヤーとのインタラクションを通じて、ありふれた空間は、隠されたシュルレアルな姿をあらわにしていく。


Islands Trailer

 「夢のなかの探索」を謳い文句にするインディー・ゲームは山ほどあるが、本作には「モノの見る夢」とでもいうべき不思議な雰囲気がある。「島々:非‐場所」(Islands: Non-Places)というタイトルが示唆するように、描かれる場面は、どれも、私たちの日常に点在する「場所ならざる場所」、すなわち、目的地とはなり得ない、ある場所からどこか他の場所へ向かう途中に通過されるべき「非‐場所」、である。そこを通過するものが人間だとは限らないが。

 場面を回転させながらオブジェクトをクリックしていくので、「パズル」と誤解されそうだが、クリックできるオブジェクトは明快で(点滅するもの・開閉できるもの)、どの順序でクリックしないといけない、といったパズル要素はなく、もっぱら場面を視聴覚的に楽しむゲームである。

 「アンビエント・ゲーム」といった趣きで、疲れているときにやると確実に眠気を誘うし、人や気分を選ぶだろうが(私自身、中盤の2つの場面にはすっかり退屈してしまった)、「ぶはっ」と思わず吹き出してしまうような瞬間もあり、「プレイしてよかった」と全体として満足。オムニバス形式で全体を通したストーリーのようなものはなく、はっきりと現代生活についての風刺的なメタファーを感じさせる場面もあれば、ただ純粋に遊び心の映像と感じさせる場面もある。個人的には、「ブーン」という室内に響く機器の音など、日常の雑音を新鮮な目(耳?)で眺めることができ、おもしろかった。

 プレイ時間は40分ほど(作者によると「約45分」)。英語というか言語は、一切不要。

 作者のカール・バートン(Carl Burton)は、独特な世界観を感じさせる印象的なGIFを発表してきたアニメーターで、私はプレイ後に、彼の作品を以前にも目にしたことがあったことに気がついた。バートンは、日本でも著名なカナダの小説家マーガレット・アトウッドが環境破壊について論じた文章に挿絵アニメーションを提供しており、『Shelter』という短編アニメーションも発表している。


Shelter, an animation by Carl Burton