【無料ゲーム】『Handväska!』:ハンドバッグであなたの町からファシストを撃退

作品名:Handväska!
開発元:Ramsey Nasser and Jane Friedhoff
発表年:2017年
itch.ioにて無料配布(“Name your own price”)

 あなたの町にファシストが押し寄せてきた。押し出してあげよう!

 ハンドバッグ片手に、集会しているファシストを力の限り吹き飛ばすゲーム。あなたのハンドバッグの一撃は突風を巻き起こし、目の前に立つスキンヘッドたちをなぎ倒す。その名も『ハンドバッグ!』。
 最初の一撃から15秒間、という時間制限があるので、大量撃退を狙うには最初の一撃をどこからどの角度でやるかが重要となりそう(私自身は、76%までしか達成できなかったが)。

 48時間のゲーム・ジャムで2人のチームにより作られたとのことで、完成度は粗く、私自身フリーズも体験したが、「ハンドバッグでスキンヘッドを吹き飛ばす」と聞いて想像されるゲームプレイをしっかり作ってくれている、といった感じで、なかなか爽快。はっきりとした時事的な観点、政治的スタンスを込めつつも、ゲームそのものを不必要にシリアスにしようとしていないあたりも好感が持てる。

 ゲームの元ネタとなっているのは、行進するネオ・ナチを女性がハンドバッグで叩こうとする瞬間を収めた有名な写真。

 1985年にスウェーデンでハンス・ルネッソン(Hans Runesson)という写真家によって撮られた喚起的な一枚だが、そのバックストーリーは決して明るくない。写真は、撮られた翌日にスウェーデンの代表的な朝刊紙「ダーゲンス・ニュヘテル」(Dagens Nyheter)に掲載され、賞を受けるなどして注目を集めたが、被写体となった女性は、突然のメディアからの注目や彼女の行為をめぐる物議に苦しんだのか、1988年に自殺。女性はユダヤ系ポーランド人で、母親がナチスによる強制収容所のサバイバーであった、という(The New York TimesWikipedia英語)。また、典拠が定かでないが、Rare Historical Photosというウェブサイトは、殴られている側のネオ・ナチは、後にユダヤ人の同性愛者を拷問の上に殺害して有罪判決を受けた人物だと述べている。

 Polygonの記事より発見。ゲームは最低額設定なしの「あなたが値段をつけて」で、無料でダウンロード可能(Download Nowのボタンをクリックした後に出る画面で”No thanks, just take me to the downloads”をクリックすれば、アカウント・支払いなしでダウンロード画面に行ける)。購入額を支払った場合、人種差別をはじめとする差別問題への取り組みで知られる非営利団体・南部貧困法律センター(the Southern Poverty Law Center)に全額寄付されるという。

余談

 ファシスト撃退といえば、つい先日、アメリカの白人至上主義者リチャード・スペンサーが顔面パンチを喰らう瞬間の映像が英語圏のネットを沸かせたばかりである。

 以前別の記事で触れたが、スペンサーは、数年前から英語圏ネット上の極右グループによって自称の語として用いられている「オルト・ライト」「オルタナ右翼」(Alt-Right)なる語の考案者とされる人物で、ドナルド・トランプの大統領選勝利に際して集会で「ハイル・トランプ!」と叫んだことで知られる。その彼がトランプ大統領就任の1月20日にインタビュー・カメラの前で殴られたことが映像とともに報じられると、大量のリミックス動画がソーシャル・メディアを覆い、インターネット・ミームを利用してきた当人がミームによる逆襲を受けるかたちとなった(The Verge)。
 リミックスそのものに興味のある方は、Kotakuがゲーム絡みを含む人気作をセレクションしているので、そちらからご覧頂きたい。

 なお、こういう出来事に際して「相手が誰であろうと暴力は許されない」「意見の相違を暴力で解決すべきでない」などと退屈な議論を始める人(とそれに便乗するネオナチ当人・同調者・擁護派)が必ず出てくるのだが、ゲームはともかく、現実の出来事について言えば、スペンサーは、「人類の文明に黒人は本当に必要だろうか?」「黒人大量虐殺は正当ではないか?」「彼らを取り除く最良にして最も簡単な方法は何だろう?」などと書かれたようなコラムを載せるサイトを運営していた人物である(Slate)。殴るべきかどうかはマイケル・サンデルじゃないので知らないが、殴られても当然である。

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