【海外記事紹介】「暗い時代に、私たちはいつでも『Morrowind』に逃げ込むことができる」(Waypoint)

 紹介するのは、Viceのゲーム・サイト、Waypointの記事「暗い時代に、私たちはいつでも『Morrowind』に逃げ込むことができる」 (Jenn Wright, "In Darker Times, We Can Always Escape to 'Morrowind'", Waypoint, 2017/02/04) 。MMORPG『エルダー・スクロールズ・オンライン』(以下、『TESO』)の大型拡張『Morrowind』の発売決定を受けて、このオープンワールドRPGシリーズが提供してきた「現実逃避」をめぐる記憶と想いとを、いまという時代に重ねながら内省的に綴った、不思議な読後感のある文章である。

 タイトルの“Morrowind”(モロウィンド)とは、人気RPGシリーズ『エルダー・スクロールズ』のファンタジー世界における一地域の呼称であり、その地を舞台としたシリーズ3作目のタイトル。『The Elder Scrolls III: Morrowind』(2002)は、『The Elder Scrolls V: Skyrim』(2011)、そして 『Fallout 4』(2015)へといたるBethesda Game StudiosによるオープンワールドRPGの方程式を決定づけた記念碑的作品として、根強い人気を持つ(なお、オンラインRPG版『TESO』は、本シリーズのBethesda Game Studiosではなく、Zenimax Online Studiosにより開発されている)。

 自分は「絶対『Morrowind』!」主義のシリーズ・ファンではないし(編集長はそうだとのこと)、自分が人生のそのときにどれくらい現実逃避を必要としていたかに印象が左右されると思うから、その手のシリーズ比較の議論には気が乗らない、と断った上で、記事の著者は、それでも、『TESO: Morrowind』予告編によって鮮烈に呼び覚まされてしまった『Morrowind』へのノスタルジー、そして、作品の根底にあったテーマと現実との重なり合いを意識しながらも現実逃避への誘いを感じている自らに対する複雑な心境を、次のように述べる。

・・・私は、極悪にして秘密主義的な「カモナ・トング」(Camonna Tong)に加入できないかと、ひそひそ話や紙の切れ端を追って、ありとあらゆる「コーナークラブ」〔訳注:モロウィンドにおける酒場〕に潜り込んだ。この孤立主義者とナショナリストの強力な結社に加わり内側から変革することを私は望んでいたのである。私は、ときに泥沼だらけで、ときに砂埃にまみれた大陸を半分横断してクエストを追い求めた。私を加入させてくれる誰かを、誰でもいいから見つけ出そうとして。そして、誰もそうしてはくれなかった。

なぜなら、『Morrowind』では、あなたはつねに「異邦人」(outlander)の役を割り当てられているからである。そして、どんなによい行いをしようが、誰に感銘を与えようが、あなたはそうであり続けるのだ(トランプによる入国禁止とそれに対する抗議という観点から見て、今日、特別な重みを持つ事実である)。あなたはつねに異邦人であり、その帰属感の否定は、強情なほどに、苛立たしいほどに厳密だ。あなたはいつも居場所を持てるわけではない。高校生であろうと——『Morrowind』が出たとき、私がそうだった——誰もがそのことを学ぶ。誰かがいつもあなたに対して「ノー」と言い、本気でそう言うのである。


いまは、よくない時代だ。忘れることのないテーマが流れたとき、胸が締め付けられたことを、私は後悔するべきなのだろうか? 私はそれを抑圧し忘れ去るべきなのだろうか? そうすべきであるように思える。そうすることが当然であるように思える。ゲームの音楽に感動させられるなんて、ちょっと低俗ではないかと思える。

そうなのかもしれない。私はどこかで自分の期待を隠したがっているのだ。だけど、私はまた、世界に何かよいものが存在することを感じたがってもいるのだ——たとえこれがそれではなかったとしても。

そして、私は何週間もそう感じていないのである。


The Elder Scrolls Online: Morrowind Announcement Trailer by Bethesda Softworks

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