“バノン大統領”の『World of Warcraft』マネー農場秘史

 Boing BoingでSF作家のコリー・ドクトロウがおもしろい半年前の記事を紹介していた。「トランプのキャンペーンCEOの知られざる『World of Warcraft』キャリア」と題されたWiredの記事がそれだ。「トランプのキャンペーンCEO」とは、ドナルド・トランプの大統領選キャンペーンで途中からCEO(最高責任者)を務め、今や首席戦略官・上級顧問という肩書きでホワイトハウス入りし、トランプ大統領の最側近、もといトランプを操る影の大統領(“President Bannon”)と噂されるスティーヴン・バノン(Stephen Kevin "Steve" Bannon)のこと。彼がトランプ陣営に加わる直前まで陰謀論・ヘイトデマの拡散で悪名高い右翼ニュースサイトBreitbart(ブライトバート)のCEOを務めていたことや、より以前にはゴールドマン・サックスに勤めていたことはよく知られている。だが、記事によると、彼にはもう一つ、人気MMORPG『World of Warcraft』のゴールドファーミング会社のトップという、いかがわしい経歴があるのだそうだ。

 「ゴールドファーミング」(gold-farming)とは、オンラインゲーム内の仮想通貨を稼ぎ、現金と交換する行為のこと。典型的には、発展途上国の低賃金労働者を組織的に雇って酷使し集めたゲーム内通貨を先進国のプレイヤーたちに現実の通貨と引き換えに売る、というかたちで行われている、とされる。ゲーム会社からもプレイヤーからも忌み嫌われている行為であるばかりでなく、現代の労働搾取工場(sweat shop)としても悪名高い。

 Wiredの記事より抜粋:

会社〔社名Internet Gaming Entertainment〕は、バノンを投資者として、元子役スターのブロック・ピアスによって設立された。バノンは、ゴールドマン・サックスに、仮想の世界で仮想の商品を売る会社へ6000万ドルを出資させることに成功したのである。
2007年、IGEがプレイヤーたちのゲームの楽しみを「大きく損なっている」と告発した1人の『World of Warcraft』プレイヤーによる訴訟の結果、会社は暴落した。会社はAffinity Mediaと名前を変え、バノンがCEOの座を引き継いだ。彼はBreitbartに加わる2012年までその役職に留まった。偶然にも、Breitbartもまた、実在しないものをインターネットで売り広める企業である。

 そうして、彼が2016年にBreitbartを去って加わったのが、トランプの選挙キャンペーン、次いで政権となるわけである。


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