「史上最もぶっ壊れたゲームの一つ」
最近の話題というわけではないが、備忘録的に。
2007年発売のオープンワールド・アクションRPG『Two Worlds』。英語圏では、ゲームそのものよりも、前年発売の『The Elder Scrolls IV: Oblivion』との不幸な(無謀な?)比較によって記憶されているゲームだ。発売前には「強化版の『オブリビオン』」(Oblivion on steroids)と謳われ、発売後には「貧乏人の『オブリビオン』」(a poor man's Oblivion)とこき下ろされたのである。独特の愛嬌を見出すファンもいる一方で、ストーリー、ゲームプレイともに嘲りや失笑を誘った。
『Two Worlds』は、お粗末なグラフィックス、おぞましい声の演技、ぎこちないインターフェイスのために、レビュアーたちから非難を浴びた。Xbox 360版はとりわけバグだらけで、苛立たしいほど規則的に、動かなくなるのであった。
『Two Worlds』の声の演技は、実のところ Reality Pump〔開発スタジオ〕のスタッフによってなされており、開発元は「私たちが成し遂げたことに誇りを感じますが、最終的な結果を見ると、必ずしも私たちの強みではなかったことが分かります」と語った。
ところが、この「史上最もぶっ壊れたゲームの一つ」(one of the most broken games of all time)は、ゲーム全体をすっかり飛ばすことができるため、ゲームの最短クリア記録を競う「スピードラン」にはもってこいなのだ。そう語るのは、スピードランナーの Shaddex 氏。彼は2015年の動画で、通常クリアに30~40時間要すると言われるこのゲームのエンディングに2分で到達する方法を解説している(英語)。
Two Worlds Any% [Commentated Explanation] | Shaddex
実演されている手順はいたってシンプル。
- チュートリアル・クエストのモンスターは、アニメーション・キャンセルのバグを利用してファイアボールを連射して秒殺。
- チュートリアル・ダンジョンを出たところで会話のために待ち構えているNPCは横を素通り。
- メイン・クエストを与えるキャラクター(実はラスボス)を遠距離攻撃して、反撃に放たれるファイアボールの爆発に村人を巻き込み、村総出でラスボスをフルボッコにしてもらう。
- ラスボスのHPがゼロになると、(クエストの進行と無関係に!)自動的にエンディング・カットシーンが始まる。
さらに短縮される記録
この解説動画の後で、別のスピードランナーによって、
〈ゲームがチュートリアル・クエストを与えるよりも前に出口の扉に接触すると、チュートリアル・ダンジョンを飛ばすことができる〉
という新たなバグメソッドが発見され、2017年1月には1分41秒の最速記録が打ち立てられている。この方法では、チュートリアル後に会話するはずのNPCが登場しなくなり、「2」の手間も省かれるようだ。
整理し直すと、手順は次の通り。
- 開始直後に後ろを向いて、ゲームがチュートリアル・クエストを与えるより前にチュートリアル・ダンジョンから出る。
- ラスボスを攻撃して、反撃のファイアボールに村人を巻き込み、村総出でラスボスをフルボッコにしてもらう。
- ラスボスのHPがゼロになると、エンディング。
Two Worlds (PC v1.1): Any% Speedrun in 1:41 | Deluxe233
感心すべきなのか呆れるべきなのか、特筆すべきは、ここには(たとえば、ベセスダ製オープンワールドのスピードランで見られる)〈クイック・セーブ/ロードを多用して意図的にバグを発生させる〉といった手の込んだテクニックが一切介在していないことだろう。
- ラスボスが死んだらメイン・クエスト終了。
- 一定のダメージを受けたらNPCは死ぬ。
- 攻撃されたNPCは仲間と一緒に反撃。
といったゲームのプログラミングが、律儀というかバカ正直に機能し合った結果、ゲームがゲーム全体をすっかり無視して、冒険を開始させることなく、村人にラスボスを殺害させ、脈絡なくエンディングを流し始めるのである。
ただし、後者の動画にバージョンが明記されているように、メイン・クエスト前にラスボスを倒せる、というこのミスはさすがに修正されたようで、デジタル販売ではなく、発売当初の箱売りのゲームを見つけないと、このスピードランに挑戦することはできないようだ。
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