トランプの動機を見抜く簡単な方法
みなさん、ここにいる彼はバカのように喋るし、バカのように見えるかもしれませんが、騙されてはいけません——彼は本当にバカなのです。
(映画『我輩はカモである』1933年より)
ドナルド・トランプ米大統領が今月9日にFBIの長官ジェームズ・コミーを突然解任したことが物議をかもしている。捜査機関の独立性を尊重すべき大統領によるFBI長官の解任そのものが異例であるためと、去年の大統領選へのロシアによる介入疑惑およびトランプ陣営とロシア政府との関係をめぐる疑惑についてFBIが捜査に当たっている真っ只中であったためだ。ただ、その経過自体は普通のニュースを読めばいい話なので、CNN日本語版の記事を貼っておく。
問題はその語られ方なのだが、たとえば上の二つ目の記事のタイトルは奇妙である。「本当の理由」が分からない人がいるだろうか?
コメディアンのスティーヴン・コルベア(Stephen Colbert)が、この点について、至極まっとうな読み方を提示してくれている。
James Comey, You Just Got Trump'd! | The Late Show with Stephen Colbert
問題は、なぜトランプがこの解任を行ったか、ということです。目下のところ、ドナルド・トランプはロシア問題の捜査を阻止するためにジェームズ・コミーを解任したかのように見えますが・・・それが理由ですね。なぜって、私は確信を持っていますけど、この2年間のドナルド・トランプから私たちが学んだことは、彼がやっているかのように見えることがまさに彼のやっていることである、ということだからです。
これを踏まえて、CNNの一つ目の記事を読むと、思わず笑ってしまう(強調は引用者)。
だがそれ〔ヒラリー・クリントン氏の私用メール問題に関する捜査の不手際〕は何カ月も前の話だ。トランプ氏がこのタイミングでコミー氏を解任すれば、背後にはロシアによる選挙介入問題の捜査を妨害する意図があったと疑われても仕方がない。そこまでは考えが及ばなかったとみられる。
「みられる」というか、たぶんその通り「そこまでは考えが及ばなかった」のであろう。すなわち、去年の大統領選中にクリントン候補(当時)のいわゆる私用メール問題をめぐって「選挙介入」とも受け取れる行動を取った一件でコミー氏は民主党やリベラル派から批判を受けていたから(この一件については別記事を参照)、それを理由に持ち出せばこの解任は反発を招かない、と政権が思い込んでいたふしがあるのである(というか、おそらくそうなのである)。別のコメディアン、サマンサ・ビー(Samantha Bee)が、CNNにより報じられた政権筋の声を取り上げて、この点について明快な指摘をしている。
Our Weekly Constitutional Crisis: Comey Edition | May 10, 2017 Pt. 1 | Full Frontal on TBS
CNN:私が今夜ホワイトハウス内部の議論を知る情報源から聞いたところでは、彼らはこの解任がこのような政治的な大騒動となることを予期していなかった、とのことです。
ビー:ニュース速報! 私たちの多くは、政敵を憎む以上に民主政治の規範を大事にしているんですよ、おバカな大統領さん。
コミー氏個人に対して政治的反感を持つことと、コミー氏の長官解任を法の支配を脅かす暴挙と感じることとのあいだには、何ら矛盾はないのだが、そういう短絡的でない思考が理解できない(ように見える)のがトランプ大統領でありその陣営であるらしい。
騙されてはいけない
ということで、冒頭のマルクス兄弟の映画からの引用に戻る。
みなさん、ここにいる彼はバカのように喋るし、バカのように見えるかもしれませんが、騙されてはいけません——彼は本当にバカなのです。
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