12日木曜日のヴァージニア州シャーロッツビルで開かれた白人至上主義者の集会とそこでの殺傷事件。昨日の記事でこの騒動をめぐるドナルド・トランプ大統領の反応について論じたが、関連して、トランプが白人至上主義グループをこれまで一体どの程度非難してきたかの記録と、そこで用いられてきた言語の特徴について、的確な指摘を行っている記事が出されていたので、要点を紹介しておく(German Lopez, We need to stop acting like Trump isn’t pandering to white supremacists, Vox, 2017/08/13)。
ネオナチがトランプ称賛:「コメントはよいものだった」
トランプ大統領があなたに対して怒っていたら、彼はあなたにそれと分からせるだろう。これは、トランプについての揺るがないルールであり続けている。〔……〕ロージー・オドネルから、戦死した米兵の家族まで〔訳注〕、トランプは、彼の邪魔になる者であれば誰であろうと、進んで非難してきたのである。
だが、白人至上主義者となると、トランプの声明はどれも珍しく生ぬるいものである。
ホワイト・ナショナリスト、ネオナチ、クー・クラックス・クランのメンバーらがヴァージニア州シャーロッツビルに押し寄せ、この週末、小さな町に混乱と暴力をもたらしたあと(少なくとも3人が死亡した)、トランプは、誰も具体的に非難しない、奇妙なほどあいまいな反応を示した。「我々は多くの陣営における憎悪と偏狭さ、暴力のはなはだしい誇示を最大限強い言葉で非難する。多くの陣営における、である」と。
声明の意図を明確にして欲しいと尋ねられたホワイトハウス高官は、この立場をより強硬なものとした(doubled down)。「大統領は、あらゆる側からの憎悪と偏狭さ、暴力を非難するものである。今日、デモ隊とカウンター・デモ隊とのあいだに暴力があったのである」と。ホワイトハウスが——しかし、重要なことに、トランプ本人ではない——がようやく、大統領が「多くの陣営」における暴力と偏狭さを非難した中には「当然、白人至上主義者、KKK、ネオナチその他過激派組織が含まれる」と明言したのは、一日中批判が繰り返されたあとでのことであった。
トランプの心のうちを言い当てることなどできない。だが、パターンははっきりとしている。幾度となく、トランプは白人至上主義者を非難するチャンスを持ったが、彼らを非難する代わりに彼らに迎合したのである。
過去数年にトランプが酷評してきた人々の名前に目を通して見ることは有益だ。〔……〕トランプの反目がどれほどの広がりを持つかをよく示唆してくれるのである。
たとえば、彼のテロリズムに対するポジションを見てみよう。トランプは、オバマとクリントンが、彼の見方でいう「過激派イスラム・テロリズム」(radical Islamic terrorism)を非難しないことをしきりに酷評した。この表現を用いないことには、重要な国防上の考慮があるのだが、そんなことは関係ないのだろう。
そのため、ムスリムの実行犯によるものかもしれない攻撃が発生した際には、トランプは、当局が何らかの詳細を認めるよりも前に、素早くテロリズムだとツイッターで断定し、入国禁止といった彼の政策を推進するのに利用するのである。
だが、白人至上主義者のこととなると、トランプは全く違うアプローチを選ぶのである。
昨年2月にトランプがCNNの番組「State of Union」に出演した際、ホストのジェイク・タッパー(Jake Tapper)は、彼にとても簡単な仕事であるべきものを与えた。すなわち、KKKを非難する、というものだ。だが、トランプはのらりくらりとはぐらかしたのである。
トランプ:まぁお分かりだろうが、私はデヴィッド・デュークについて何も知らないんだよ。君が言う白人至上主義や白人至上主義者についてすら私は何も知らないんだ。だから、何とも言えないよ(I don't know.)。なんというか、何とも言えないんだ。〔……〕
トランプ:まぁ、グループのことを調べてみないとね。なんというか、君が話しているグループのことを私は知らないんだよ。君だって、私自身が何も知らないグループを私が非難することは望まないだろう。調べてみないとね。もし君がグループのリストを私に送ってくれたら、私は彼らについて調査して、何か問題があると思えば彼らとの関係を拒絶するだろうよ。〔……〕
トランプ:正直言って、私はデヴィッド・デュークのことを知らない。会ったことがあるとも思わないね。会ったことがないのは確かだ。とにかく、彼について何も知らないんだよ。
はっきりさせておくと、トランプは過去にデヴィッド・デュークのことをよく知っていた。2000年の大統領選への改革党からの出馬を拒んだ際、トランプはデュークと関わりを持ちたくない、と語ったのである。デュークは、パット・ブキャナンの改革党候補指名を支持していた。トランプは当時デュークのことを「偏狭な人物、人種主義者、問題」(“a bigot, a racist, a problem.”)と呼んだ。だが、この態度は、2015年に彼が大統領選に出馬してから変化したようだ。
トランプは、結局、タッパーのインタビューの数日後になって、デュークとの関わりを拒絶はした。MSNBCの番組「Mourning Joe」で、「デヴィッド・デュークは悪い人間だ、何年も前から繰り返し関わりを否定している(disavow)」と述べたのである。トランプは「彼との関わりを否定する。KKKとの関わりを否定する」とも加えた。彼は、タッパーの番組上で非難することを当初拒んだのは、イヤホンの不良のせいだった、とした。インタビューの書き起こしを見ればお分かりのように、この説明は全く意味をなさない。
だが、トランプがデュークを非難するそのやり方も珍しいものだった。トランプが標的を見つけるとき、彼は通常、その人たちを非難するために、強い感情を呼び起こす言語を用いる。〔・・・〕だが、白人至上主義者については、彼はほとんど消極的な言語を用いるのだ。
同じ問題は、その年ののちほどにも持ち上がっている。トランプが当選し、記者たちが再び、ホワイト・ナショナリストの支持を受け入れるかと尋ねた際のことである。トランプは、彼のもはや典型的となった、白人至上主義者に対する消極的な言語を用いて、「そのグループを元気づけたくない、グループとの関係を否定する」(“I don’t want to energize the group, and I disavow the group.”)と述べたのである。
木曜日、トランプは、シャーロッツビルでの混乱について白人至上主義者を非難する代わりに、「多くの陣営」を非難した。〔……〕
木曜日の彼の発言のすぐあとで、白人至上主義者のウェブ・サイト The Daily Stormer は、トランプを称賛した。
トランプのコメントはよいものだった。彼は我々を攻撃しなかった。彼はただ国民が一体となるべきだと述べた。我々に対して特別に向けられた言葉は一切なかった。
彼はなぜ人々が怒っているのかを調べる必要があると述べ、憎悪者(hater)がいる……両方の側(both sides)にいる、と示唆した。
だから、彼は反ファシスト(antifa)は憎悪者であると示唆したのである。
我々に対する反対のシグナルは事実上全くなかったのだ。
彼は我々全員を愛すると言った。
彼はまた彼を支持するホワイト・ナショナリストについての質問に答えることを拒んだ。
非難は全くなかったのである。
非難するかと尋ねられたとき、彼はただ部屋を歩き去った。
本当に、本当によいものである。
彼に神の御加護を。
※訳注:ロージー・オドネルは、コメディアン・女優。2006年以来、ドナルド・トランプと確執関係にあり、CNNの政治欄にそのタイムラインがまとめられている。他方、「戦死した米兵の家族」とは、2016年の民主党全国大会で壇上に上ったカーン夫妻を指す。息子を派遣先のイラクで亡くしたムスリムの夫婦で、夫のキズル・カーン氏は、当時共和党候補であったトランプを「あなたはアメリカ憲法をお読みになったことがあるのか?」と批判した(参考:CNN日本語版)。
【追記】(2017/08/15)
上の記事紹介をした直後に、「KKK、ネオナチ、白人至上主義」を含む「人種主義」を非難する声明が、トランプ大統領本人から出されたので、別に追補的な記事を書いた。
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