【海外記事紹介】「男らしくない:環境への配慮に対する抵抗の驚くべき理由」(Scientific American)

「驚くべき」かは分からないが、興味深い報告。紹介するのは、アメリカの科学雑誌 Scientific American の研究紹介記事「男らしくない:環境への配慮に対する抵抗の驚くべき理由」(Aaron R. Brough and James E.B. Wilkie, "Unmanly: A surprising reason for resistance to environmental goods and habits", Scientific American, 2017/12/26)

 2人の著者は、それぞれユタ州立大学とノートルダム大学の、経営学部マーケティング専攻の准教授で、環境にやさしい行動についての彼らの心理学実験の結果について報告している。

 それによると、女性に比べて男性が環境にやさしい行動をとらない傾向にある理由は、男性たちが「男らしくない」と思われるのを不安に感じているからなのだという。

傷つきやすい「男らしさ」

 以下、記事より抜粋:

環境活動の領野において女性たちは男性たちに勝る成績を長らく収めてきた。年齢グループや国を超えて、女性はより生態系にやさしいライフスタイルを生きる傾向があるのである。男性に比べて、女性たちは、ゴミをポイ捨てすることが少なく、より多くリサイクルをし、CO2排出も少ない。何人かの研究者たちは、女性は利他的行為により優先度を与える、といった性格上の違いが、エコ活動におけるジェンダー・ギャップを説明できるのではないか、と示唆してきた。

我々の研究は、付け加えるべき可能性を示唆している。男性たちが環境にやさしい行動を避けるのは、環境にやさしい行動が彼らの男性性について発するメッセージのせいなのである。男性たちが環境を気にかけていない、ということではないのだ。ただ、彼らはマッチョであると感じたがる傾向にあり、生態系にやさしい行動が自分たちを女々しく見せないかを心配するのである。

3つの研究グループとの共同で行われたこの研究は、2000人を超えるアメリカと中国の被験者を対象に7つの実験から構成されている。〔……〕「環境にやさしい女性らしさのステレオタイプ」("green-feminine stereotype")のために、男性も女性もともに、生態系にやさしい製品や行動、消費者を、環境にやさしくないほうの対照物に比べて、より女性的と判断したのである。


男性は、女々しいと感じないようにするために、環境にやさしい製品や行動を避ける。一つの実験で、私たちは、花柄のピンク色のギフト・カードを見せることで男性被験者たちの男らしさの感覚を脅かし、そのカードを使って3つの製品(ランプ、バックパック、バッテリー)を買うことを想像するよう求めた。通常のギフトカードを見せられた男性たちに比べて、男性性を脅かされた男性たちは、それぞれの品物について、環境にやさしいものよりも環境にやさしくないもののほうを買う傾向を示した。男性性を骨抜きにされた男性が環境にやさしくない選択によって彼らの男性性を主張し直そうとする、という認識は、ゴミのポイ捨てや水の浪費、電気の使い過ぎといったものに加えて、男たちに女々しく感じさせるというただそれだけのことによって、人は環境に害を与え得ることを示唆している。

皮肉なことに、男性は女性に比べて神経質(sensitive)でないと考えられがちだが、自身のジェンダー・アイデンティティについての認識となると、彼らは特別に神経質となるようだ。実際、過去の研究では、男性は、女性に比べて、日々の食べ物や日用品において男性的なバージョンと女性的なバージョンとのあいだで選択をすることにより多くの困難を感じ、自身の決断について考慮する時間を与えられると、たいてい、より男らしいとされるものに自分たちの好みを変えることが明らかとされている。

マッチョなノリで環境にやさしく?

 著者らは、ここから、環境保護におけるジェンダー・ギャップを埋めるためのマーケティング的対症療法として、①「男らしさの是認」(masculine affirmation)と、②「男らしさの印象付け」(masculine branding)、という二つを提唱している。

①は、「環境にやさしい行動によってあなたの男らしさは損なわれていませんよ」というメッセージを送り、男の不安を和らげろ、というもの。世話の焼ける人たちである。

②は、「男らしさ」に訴えることでエコを売り込め、というもの。「より男らしいフォント、カラー、言葉遣い、イメージ」を使って「マッチョな環境へのやさしさ」(“Men”-vironmentally-friendly)としてマーケティングすることができる、というのである。エコな製品や活動を、「モンスターエナジー」の缶みたいな、体に悪そうなカラーとフォントでパッケージしろ、との提案だろうか?

 いずれも実験上、一定の効果が見られたそうだ。しかし、個人的には、ジェイソン・ステイサムの半裸写真付きパッケージの環境にやさしい洗剤が店頭に並んでいたら嬉しくなる気はするが、そんな小手先の対症療法より、男の不安の根源にある「男らしさ」という観念について抜本的な治療を考えたほうが……とも思う。

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