【ゲームの英語】『We Know the Devil』:"Promise me"

(※)以下では、『We Know the Devil』のエンディングの一つに登場するセリフを複数取り上げています。ネタバレ注意。

「約束して」

 本日のフレーズ:

Promise me hell is right there, right behind that door. All of it. Promise, really promise, there's no going back.

We Know the Devil, Date Nighto, 2015)

 2015年のインディー・ゲーム『We Know the Devil』より。 1980年代風のスラッシャー映画とアニメ『美少女戦士セーラームーン』とがモチーフに取り入れられた、「グループ関係をめぐるホラー・ビジュアル・ノベル」(Group Relationship Horror Visual novel)である。

 “promise”という単語は、自動詞/他動詞/名詞として機能し得るが、ここでは、いわゆるSVOO(主語+動詞+間接目的語+直接目的語)構文の他動詞。直接目的語が単語の普通文であれば、“He promised me a reward.”(「彼は私に対して報酬を約束した」)といった具合になる。ここでは最初の文、終わりの文ともに、命令文で、語ではなく、節が目的語に置かれている。それぞれ、「私」(me)に対して”(that) hell is right there, right behind that door”ということ、“(that) there's no going back”ということを「約束して」と命令している。

 ‘hell’(地獄)や‘heaven’(天国)は、基本的に不可算名詞。"there is no ..."は、「…は存在しない」ということだが、動名詞と用いると、「…することはあり得ない」という可能性の否定となる。

 私的訳文:

約束して、地獄はすぐそこにある、あのドアの向こうにあるって。その全てが待ち受けているんだって。約束、本当に約束してよ、絶対に引き返すことなんかできないんだって。

悪魔のささやき

We Know the Devil - Trailer

 公式サイトより:

『We Know the Devil』は、サマー・キャンプであなたを泣かせたすべての人たちについての物語です。それは、あなたがどこかになくした『セーラームーン』のVHSテープについての物語です。それは、責任感を持とうとしない態度がいかに伝染するかについての物語です。それは、3人のグループにおいて、2人は他の1人よりもより親しくなる、ということを知る物語です。

 物語の舞台は、魔法少女アニメとリアルな宗教カルトが手をつないで一緒にやってきたようなサマー・キャンプ。ジュピター、ヴィーナス、ネプチューンの3人が一つの班として、小屋で一夜を過ごす。悪魔が訪れるのを待ち受けながら。

Being in the Summer Scouts sucks incredibly. The cabins are stuffy, the beds are gross, the food is grosser, the counselors only sing about jesus, and they won't let us have a transformation sequence.

サマー・スカウトにいるというのは、信じられないほどにサイテーだ。山小屋は蒸し暑いし、ベッドは気色悪い、食べ物はもっと気色悪い。指導員はイエス様のことしか歌わないし、変身シーンをやらせてくれない。

 サマー・キャンプとは、歪なものであることを知りながら、参加することを期待される、そんなシステムであるようだ。彼らがどれだけ冷めた態度を装おうと、どれだけ反抗的に振舞おうと、その期待が彼らをなお縛り付けている。

But what else do you expect me to do? I want to leave this camp, this state, this planet. But I can't. I just can't.

だけど、他にどうしろって言うのさ? こんなキャンプ、こんな国、こんな星からは逃げ出したいよ。だけど、できないんだよ。どうしてもできないんだ。

 地獄は天国に行くことが許されない者が行くところだ。誰もが天国に行けるのであれば、「天国」という観念に意味はない。誰かが天国に行けるという約束のその中に、すでに「地獄」の存在が、天国にふさわしくない者たちの存在が書き込まれているのである。だから、仮に自分が救われるにふさわしくないことを内心知っていたとしても、自分よりふさわしくない者の存在が救済の希望を与えてくれる。そして逆に、「このシステムの中で自分が救われることは絶対にない」というのは、耳を傾けてはいけない、悪魔のささやきなのだ。

There is room for three in my world.
And only two in his.

僕の世界には3人のための居場所がある。
彼の世界には2人分の居場所しかない。

 ドアの向こうに待つ「地獄」とは何か? 「天国」という物語の外側、救われるべき者とそうでない者とを選り分ける物語を断ち切った向こう側のことである。そこへ踏み出したとき、もはや約束された物語へと引き返すことはできないのだ。

次回作

 本作の制作チームは、『Heaven Will Be Mine』という名の次回作を予告している。3人の女性パイロットを主人公とする巨大ロボットSFである(公式サイト)。

Joyride a mecha
Sext your enemies
Fight the pull of gravity

メカを乗り回し
敵とセクストし
重力に抗え


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