クリストフ・ヴァルツ、トランプ勝利に深く憤る

 クエンティン・タランティーノ作品などでお馴染みのオーストリア出身のアカデミー賞俳優クリストフ・ヴァルツが、テレビの取材に対してドナルド・トランプのアメリカ大統領選勝利についてコメントした映像が海外で話題となっている。“Zib”というオーストリアのニュース番組の11月11日放送からの抜粋らしい。 あいにくドイツ語が分からないので出回っている英訳からの重訳だが、ざっと訳しておこう。

 「もしかすると私たちはトランプ氏に対して、『実際の行動を見てから評価を下そうよ』と、いわば猶予の時間を与える必要があるのでは?」とのキャスターの問いかけに、ヴァルツが悲しみと憤りをあらわにこう答える。

つまり、彼が口にしてきたことをすべてなかったことにしろ、と? 「恨みっこなしさ、彼は拷問を呼びかけたりなんかしなかったし、核兵器を持っているなら使うべきだなんて言わなかった、メキシコ人はレイプ魔とヤクの売人だなんて言わなかったんだよ」と。このリストに終わりはありませんよ。こういうものがまるで口にされなかったふりをして、「まぁ、陽気ないい奴かもしれないんじゃないか」と言え、と? なぜです? 口にしてきたことを言わなかったことになんかできませんよ。オバマその人が、トランプとの会談のあと、トランプが歓迎されていると感じられるように我々は努力しなければならない、トランプが成功することが我々にとっての成功になる、と言いました。冗談でしょ? もしトランプが彼がキャンペーンのあいだ公言してきたことに成功するのなら、一巻の終わりです。

 外国籍者としてイギリスのロンドンに在住のヴァルツは、イギリスのEU離脱投票(Brexit)に際して、離脱世論をデマ広告で煽りながら離脱決定後に責任を逃れるように党首を辞任した独立党(UKIP)の極右政治家ナイジェル・ファラージ(Nigel Farage)を痛烈に批判したことでも知られる。そのファラージはといえば、今回のトランプ勝利に浮足立って早速ニューヨークへと飛び、「盟友」とばかりにトランプと面会、金のエレベーターをバックに、いかに自分たちが庶民の代弁者かをアピールしたばかりだ。

 ヴァルツのコメントが光るのは、彼がたんにトランプ個人に対する印象を語っているのではなく、「トランプのキャンペーンがいかなるものであったか」という事実から目を背けようとするメディアや人々のふるまいに対する批判を述べているからだろう。トランプははっきりとこれらのことを約束してきたのに、どうして「まぁ暴言はあったけど」程度の感覚で片付けられるのか、と。

(ソース:Independent