[2016/11/01更新]Kindle Unlimited の印象とオススメ本


【更新】(2016/10/01)
記事の下のほうに追記したように、読み放題対象タイトルの大幅な消去を確認。利用者が振り回される状況が続きそうなので、「今のところ、おすすめできる」という評価を取り消します。

【更新2】(2016/11/01)
大量撤去の落胆を打ち消すほどではないが、追記をもう一つ付け加えたように、改善の兆しも感じられるので、期待したい。


 サービス開始からやや遅れて利用を始めたが、Amazon Kindle Unlimited を一ヶ月無料で試してみての感想は、「本が探しにくい」の一言に尽きる。品揃えにも満足とは言いがたいが、そもそもの品揃え自体が分かりにくいのである。

 では、使えないのかと言うと、そんなこともない。

  • 著者、出版社などから、自分の読みたい本を特定できる
  • 読書のメインではなく、あくまで棚を補うものとして使う
という前提での利用なら、今のところ、おすすめできるだけのコスト・パフォーマンス(月額980円)と魅力はあるように思う。
 逆に言うと、
  • 「なにかおもしろいものでも見つけて読むつもり」
  • 「これさえ登録しておけば読むものに困らなそう」
といった漠然とした期待から利用しても、ゴミの山と格闘してロクでもない本を読む習慣を作るだけだろう。本を選ぶためのプラットフォームとしては「最低」と言うほかなく、利用者側が一定の知識と目的意識とを持って本を絞り込む努力をしないと、読み放題でなければ絶対に読まなかったような本に手を出す結果になりかねないのである。

 というのは、現状ではカテゴリー検索がほとんど使い物にならないからである。

使い勝手に問題あり

 以下は、私がジャンル・カテゴリーからラインナップを眺めようとした際に遭遇した事例のほんの一部である(念のため言うが、ここでは「Kindle ストアの使えなさ」を問題にしているのであって、個々の書籍に対して害意があるわけではない)。


「社会・政治:社会学」のカテゴリーから、『3回のデートでベッドインするテクニック』


「科学・テクノロジー」のカテゴリーから、『ナニワ金融道』

 いちいちがこういう調子なので、せっかく読みたいような本があっても埋もれてしまう可能性大なのである。なので、私は、カテゴリーからよりも、出版社やレーベル名で本を探すようにし始めた。

 私が簡単な方法を見落としているのかもしれないが、読み放題対象商品に絞るために、毎回「Kindle本」→「読み放題対象タイトル」といちいちリンクを飛んでいかなければならないのも手間である。気になっていて検索した本がたまたま読み放題対象だった、というのが一番うれしいケースではあるが、そんな幸運だけを期待して登録する人もあまりいないだろうから、この「探しにくさ」が解消されない限り、面倒を覚悟しての利用とならざるを得ないであろう。

 また、ラインナップに関して、想定外の利用量で出版社側への支払いが予算超過になった Amazon が人気本を撤去した、との報道があったが、騒動以降も品の入れ替わりはあるようで、チェックしておいて、あとで再訪したら対象外になっていた、というのを見かけた。同様の事情によるものなのか、個々の本の事情によるものなのか、もともと期間限定を予定していたのか、は不明。
 見つけた時点で読み放題に放り込んでおけば、ラインナップから消えても自分の棚から勝手に削除される心配はないようだが、読み放題の上限は同時に10冊までなので、すぐ読まないけど気になる本をどこまで「利用中」に確保しておくか、やりくりが必要。厄介そうなのは、巻数モノが読み途中でラインナップから消える可能性か。
 もう少し利用者に対する透明性を高めてくれないことには、「明日もまだあるかわからない本棚」という不安は解消しづらい。

オススメのレーベル、出版社など

 ・・・と、サービス面について一通り愚痴ったところで、肝心の本について、もっぱら私の趣味の視点からではあるが、具体例からポジティヴなことを語っておこう。上に述べたように、紹介した次の日に対象外になっている可能性もあるのだけれど。


【追記】(2016/10/01)
 ものの見事に、紹介したレーベル・本のほとんどが対象外に。読もうと思っていた本の多くが突然対象外になっていて、気がついた。光文社は出版社ごと姿を消し、太田出版はマンガ・単行本が消え雑誌のみになったところを見ると、またしてもAmazon側の予算不足のためと思われる。復帰する可能性もあるが、Kindle Unlimited の現状を物語る記録として、10月1日現在、対象から外れたものに取り消し線を引いておきます。


【追記2】(2016/11/01)
 ややこしくなってきたので加筆はこれで最後にするが、少し前から、下に紹介した(そして取り消し線を一度は引いた)二作を含む「太田出版」の書籍・マンガが読み放題に復帰している。お試し予定の方・ご利用中の方は、ぜひ出版社ごとチェックして欲しい。いがらしみきお『誰でもないところからの眺め』は、私が目にした読み放題対象タイトルのなかで一番のオススメかもしれない。志村貴子の『青い花』が全巻読めるのも贅沢。


 光文社古典新訳文庫が結構入っているのが、今のところ、私にとって一番魅力的かもしれない。カント、ダーウィン、トルストイ、ドストエフスキーなど、その気になれば再読含めてこのラインナップだけでたっぷり数ヶ月使えそう。サン=テグジュペリ『夜間飛行』のような短めの小説もある。
 光文社新書もメジャーな新書のなかでは対象商品がだいぶ充実しており、玉石あるだろうが、レーベルごとチェックしておいて損がない。

 他の人文系の新書・選書として、辻田真佐憲『楽しいプロパガンダ』→書評を書いた)、吉田徹『ポピュリズムを考える』木村草太『テレビが伝えない憲法の話』といったあたりは、私もこれを機会に初めて読んだが(吉田氏の本は紙のもので積読)、読み物として面白くタメにもなる、オススメ人文書である。

 SF・ファンタジー・推理といったジャンル小説なら、「東京創元社」を是非チェックしておきたい。私は、ラヴィ・ティドハー『完璧な夏の日』をダウンロード。往年のものなら、絶版本専門「グーテンベルク21」のラインナップも悪くなさそう。

 マンガ作品含むサブカル全般として、「太田出版」が見逃せない。思いがけなかったあたりでは、バクシーシ山下『セックス障害者たち』安田理央『痴女の誕生―アダルトメディアは女性をどう描いてきたのか』なども今のところ読み放題対象だ。

 マンガはあまり調べていないのだが、最初のほうの巻のみ読み放題、という形式も少なくない様子。太田出版から出ている作品群のほか、江口寿史『ストップ!!ひばりくん!』伊藤潤二『富江』など有名作は、未読ならチェックしておきたいところかと。

 ということで、Kindle Unlimited、不満はあるが、とりあえず数ヶ月は付き合ってみよう、と私は思っている。【2016/10/01追記】こんな調子なら、早々に利用を打ち切ります。