RZAが、ラウ・カーリョン監督のカンフー映画『少林寺三十六房』(1978)のライブ演奏によるリスコア上映をやるらしい。ロサンゼルスで開かれる Beyond Fest という映画祭での企画。
RZAは、ヒップ・ホップ・グループ、ウータン・クラン(Wu-Tang Clan)の実質的リーダーで、ジム・ジャームッシュ監督『ゴースト・ドッグ』(1999)、クエンティン・タランティーノ監督『キル・ビル』(2003)などの映画サウンドトラックでも知られる。
映画祭のプログラム案内によると、RZAが初めて『少林寺三十六房』をテレビで見たのは12歳の時で、二年後には、後にともにウータン・クランを組むこととなる従兄弟とともに大スクリーンで再鑑賞したのだという。カンフーに魅了されながらも、彼がより深く影響を受けたのは、満州族の清朝当局と抑圧を受ける漢民族との対立、という物語の根底にあるテーマで、自身を取り巻く世界をこの映画の物語に重ね合わせることが、彼の後の音楽活動のインスピレーションにつながっていったのである。
RZA曰く:
カンフーということを超えて、ピンと来たのは、状況の現実味だったんだ。アメリカで黒人の子どもとして育ちながら、俺は他のどこかにこういう類の物語が存在してきたということを知らなかったんだよ。
スコアは新曲ではなく、過去の楽曲をオープニングからエンド・クレジットまで映画のフレームに合わせて編集して演奏する、という形式をとるようだが、18ヶ月前から入念に計画していた、と言うから、あえて新曲ではなく、自身のキャリアを原点となる映画に投影して、という趣旨なのかもしれない。日本にいる人間には関係のない上映情報だが、ヒップホップに詳しくない私のような一映画ファンが聞いても、興味深く思える企画。
なお、本作の主演俳優のリュー・チャーフィーは、『キル・ビル』のほか、RZAが自ら監督・主演した『アイアン・フィスト』(2012)にも出演している(こちらはカメオ出演的だが)。『アイアン・フィスト』は、賛否あるようだが、一見好き勝手ふざけているようでいて、“虐げられた者たちの闘い”というカンフー映画の王道をきちんとやっていて、個人的には楽しめた作品である。
(ソース:Birth.Movies.Death.)